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多摩ニュータウン学会 第1回研究発表大会自由研究参加
平成9年9月27日 多摩センター、繭ドームにて

 こんにちは、八王子の堀之内で牛飼って牛乳を搾っている鈴木亨です。

 きょうはここでどれだけのことが言えるか分かりませんが、私が生まれ育って 住んでいる所で今までNTと深くかかわってきたことについてどれだけの思いが あるかを言えられればいいかな思っています。
 棒読みになりますがその思いを聞いてください。
私は今、多摩NTのそば八王子堀之内で牛飼いの酪農をやって いるものです。現在は成牛を30頭と子牛を15頭を飼育して牛乳を搾り 東京酪農協同組合を通じてメーカーに出荷しています。一日に500KGから 700KGの牛乳を搾ってます。私の住む多摩丘陵の酪農は多摩地区では 古く明治40年の頃から始まっており、多摩の酪農発祥地とも言われ養蚕の仕事を しながらやってました。この仕事は多摩NTがくる間ではどこの家でも牛がいる 農業地帯でした。
 そこへ、突然、河野一郎建設大臣の時に私の住んでいる 多摩丘陵にNTがやってきたのです。もうその時点で計画は決まっていました。 多摩NTはみなさんも知っていると思いますが新住宅市街地開発法という 法律で進められています。この法律は全面買収ということで事業予定区域は すべて売らなければいけません。そして新住法は農業をすることを認めません。 それは今も変わりません。NTには農家はありません。
 そんな私達に酪農を続けたいなら北海道や那須高原へいってやればいいという ことだけでした。 私の住んでいる堀之内寺沢は11軒の酪農家がありました。 みなこの仕事に誇りをもってやっていたので多摩NTには反対をしました。 しかし、その頃は決まった法律は変えられないという、ここを除いて 19住区のNTを進めることはできないと同じ答えだけが住宅公団から 帰ってくるだけでした。酪農家11軒は将来もここで続けたい気持ちから、 酪農地帯をNT事業計画区域から除外するという運動を始め、 そのなかで美濃部都知事が東京都議会の本会議で19住区の酪農は 残していく所存でありますと答弁をしたが、しかし、その言葉も裏腹に 公団は強制収用をかかげながら全面買収を始めました。

 しかし、私達は自分が育ったこの多摩丘陵で自分の仕事、牛飼いをやり、 この地で酪農をやっていくことがこの多摩丘陵にとっても大切なことであり、 NT開発が進むところでも農業は必要であると私は考えます。しかし、 開発の波や都市開発の圧力はたいへんなもので、11軒あった酪農家は 4軒になってしまいましたがNT計画も計画どうりにいかず時代の 波にもまれ、石油ショックによって計画もスムーズに進むことは ありませんでした。そんな中で私達の新住法の事業区域除外運動も 20年かけて世の中に認められ、4軒の酪農家は残っていける流れが できつつありました。

 酪農は住宅地のど真ん中で出来る仕事ではありません、私達の4軒の 酪農家は寺沢地区にまとまってあります。そして酪農集落のまわりは NTの19住区の新住区域です。酪農集落のまわりがすぐ住宅地では 将来牛飼いを望めません。幸いにして酪農集落のまわりに多少の緩衝地帯が ありそこを農業公園として残していく方向ではありますが小さなものです。 私はいつも仕事をしながら思うのですが公団が買収したところで酪農集落に 隣接していてどうにもならない土地があります。やはり公団の中だけで 計画を立て直すのではなく地域の人達と話し合っていくべきものと考えます。

 現在、私達、酪農家4軒はこれから将来牛飼いを続けていくために、 4軒が一同になりNTの環境に調和のとれたなかで仕事をやっていくために、 農林行政、東京都の農林経済、農業改良センター、八王子市の農林課、 八王子市農協、それから東京都多摩都市整備本部、酪農家4軒が 毎月1回集まる日程で、もう1年じかく会合を開き将来続けられるように 話し合いがされてきました。農業はすぐ始められる様な仕事ではありません。 また、続けて行くために農家1軒だけの力で将来長く続けられる 仕事でもありません。この多摩NTの環境の中で私達の仕事を続けて いくにはどう調和のとれたなかでやっていくかです。そのために NTとの間に農業公園という緩衝地帯をもうけていかなければいけません、 そのためにも現在、NTの19住区がこれからどう開発が進んでいくかが 大変重要になってきます。

 ただ、NT開発の現状は空き家が南大沢で 増えていることや、値下げなどといった問題でこれからの開発の 先が見えない現状です。19住区の開発がどうなるか公団に聞いても 答えが返ってくることはなく、ただ、公団のホームページを見ても、 考慮中というだけのメッセージしかでてきません。私はこんな時、 公団の中だけで考えて行く問題ではないといつも考えています。 19住区のすぐ横で農業公園を考えている私達も含めた計画の見直しを していくべきです。

 現在、東京都で酪農をやっている農家は150軒ありますが、 減少の方向です、これからのNTと私達の酪農を続けていくために 自分の職業である酪農がどう位置づけたらいいか、また周りの19住区の 町づくりのあり方がどうあればいいかで将来が決まってしまうと思います。 私は毎日、牛小屋で仕事を続けている生活をしていますがそんな中で特に 土日になるとNTの人達が牛を見に来たり、寺沢周辺の自然を見ながら 散歩をしている光景を見ます。やはり、何か酪農集落に魅力があって やって来るのだと思います。また、毎年例年のようにNTの幼稚園の写生や、 小学校の社会科見学で何校となく見学にやってきます。

 私の畑のかたすみで 知的障害者の通所施設かたくりの家が5年たちました。 NTが出来ても由木地区にはこのような福祉作業所はひとつもありませんでした。 NTに住んでいる障害を持った親子のグループと知り会いつくったのです。
NTには住宅と公園だけしかありません、そんな町です。 今ではかたくりの通所生みんなが牛小屋に来て掃除をやっています。 室内作業になりがちな仕事が多いなか、体を動かしていい健康作りに 大変役にたっている様です。
 酪農は搾るだけの仕事になってしまっているのが 現状です。1軒の農家が牛乳の販売までやることは無理なことです。 しかし、 多摩NTという町が目の前にありながら神奈川の茅ヶ崎まで 牛乳を運んで自分の生産した牛乳がどんな人に飲まれているかわかりません。 これを考えた時、牛乳を多摩NTの人に飲んでもらえたらいいなと思います。 そう、牛乳処理工場を作って、「かたくり」のみんなの仕事場にならないかな、 NTは高齢化社会、定年後のちょっとした簡単な仕事として出来ないだろうか、 19住区に人だけを入れる器を作るのではなく、今、NTに住んでいる人達の NEEDに合う開発をしていくべきです。これからの19住区に 「かたくりNTミルクプラント」なんて出来て、かたくり、 高齢者がみんなが働ける場ができたらいいなあ!!そして酪農家にとっても 自分の作った牛乳を身近に飲んでもらえたらいいなあ!!みんなの職場も 身近なNT19住区に出来たらこんなにいいものはないんじゃあないだろうかと 考えます。

 もう、人を集めるのではなく今住んでいるNTの市民に 役に立つ今後の19住区NT開発を考えるべきとかんがえます。 地域のNEEDSにあった計画をたてることによって多摩NTの地域の魅力や 活性化につながるのではないでしょうか。もう、NT開発はハード先行の 進め方ではなく住む人の要求をみたす町づくりにかえて行くものと 考え新住法による町作りはもう終わったと私は考えます。


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